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成通卿口伝日記
一坊門殿のかゝりの下に、簾もかけぬ車のありしお、引入よと沙汰もせずして、かたがゝりにいみじきなど、さだせしほどに、車の本にて、たび〳〵数鞠おす、われはおとすべからずとて、立替て待に、とみのおの方へまりおつ、まわりあはむとせば、おちぬべくて、轅の方よりくゞりこえざまに、鞠お庭へ出す、猶轅のうちにや落ちんと覚しかば、とみのおの方より走りくぐり越て、庭へいだしてき、見物の人、のゝしりあふさまかぎりなし、