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輿車図考

輦(○)は、てぐるまとよむ、宮城門よりのるものなり、〈○中略〉また腰車(○○)ともいふは、轅お腰のほどにあてゝ、手おもちそへて引く故に、かくもいへるなるべし、〈○中略〉その用度延喜式に見えたり、〈○中略〉また小車(○○)ともいふ、〈○中略〉皇太子の晴の儀は輦車なり、〈○中略〉親王大臣の輦に乗るは、特恩にて許さるゝ事なり、されど男は宮城門より宮門までの間おのる事にて、禁内はのらず、〈○中略〉されどなかのへのてぐるまおゆりたる人も、まれ〳〵ある事なり、〈○中略〉女は人がらによりて、乗るべき所に違あり、その制、式に見えたり、されど猶その時々に宣下ありとぞ、〈○中略〉上にみえたる人がらの外にも、別宣旨にてゆるさるゝことあることなり、〈○中略〉僧綱にもあり、宮城門の外にて輦車にのる事は、すべてなき事なるお、たゞ春日の斎女、社頭にての事と見ゆ、〈○中略〉これは斎王ならば、輿に乗り給ふべき所なるお、おもき事なれば、輦にかたへたるにて別儀なり、又大臣大饗に、尊者の乗られし事みゆるは、いぶかしきことなり、