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古事談
二/臣節
貞信公〈○藤原忠平〉のひたまゆと雲檳榔は、代々一の所に伝へて有けるお、知足院〈○藤原忠実〉の御時、八条大相国、〈○藤原実行〉与高松中納言実衡同時拝参議、共に申御車之間、ひたまゆおば、高松宰相に給之由、内々有其告、同〈く〉ばひたまゆおこそたまはらめと思て、同日拝賀之間、於陣口仰雑色〈天〉被奪替雲々、件雑色、於天下依為無双、京童部、高松之車副等、不及敵対と雲々、件車相伝三条内府、〈○実行子公教〉而薨逝之時、葬例可為毛車之由依遺言、取寄件車之処、相国禅門聞此由、争〈で〉可用件車哉とて、臨時被用他車雲々、雖然其料とて取寄たりし車なればとて、子孫被棄置之、或人雲、件車在西院雲々、
○按ずるに、高松中納言実衡は、大宮中納言通季の誤なるべし、通季は実行の弟にして、公卿補任に拠れば、永久三年四月二十八日、実行と共に参議に任ぜらる、忠実関白の時なり、而して実衡は長承三年参議に任ぜらる、永久三年に後るヽことに十年なり、