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源平盛衰記

資盛乗会狼籍事
同〈○嘉応〉二年七月三日、法勝寺へ御幸ありければ、当時の摂籙基房公〈号松殿〉参給けり、還御の後、殿下三条京極お過給けるに、三条面に女房の車あり、夕陽の影に、車の中透て曇なく見え透、鳥帽子著たる者の乗たりけり、居飼御厩舎人等車より下べき由責けるに、聞入ずしてやり過さんとしけるお、狼籍也とて、前の簾並に下すだれお切落たりけるに、葛の袴お著たる男あり、車お馳て逃けるお、追懸て散々に打けり、