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源平盛衰記

中宮御産事
御産〈○高倉中宮平徳子懐妊〉ならず、二位殿〈○徳子母〉心苦しく思給て、一条堀川戻橋にて、橋の東の爪に、車お立させ給て、橋占おぞ問給ふ、十四五計の禿なる童部の十二人、西より東へ向て走けるが手お扣同音に、摺(しち)は何褶(しち)、国王摺(しち)八重塩路の波の寄摺(しち)と、四五返うたひて、橋お渡、東お差て飛が如して失にけり、