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十訓抄

小松の内府、〈○平重盛〉賀茂祭見むとて、車四五両ばかりにて、一条の大路に出給へり、物見車は、みな立てならべてすきまもなし、いかなる車か、のけられずらんと、ひと〴〵目おすましたるに、或便宜の所なる車どもおひきいでけるお見れば、人ものらぬ車なり、兼て見所おとりて、人お煩はさじのために、むな車お五両、立置れたりけるなり、