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続視聴草
初集十
乗物(○○)名目
乗物名目之事
乗物と雲名目、古に所見なし、凡乗物と雲は、車、馬、輿、舟の類の総名なり、然して車に糸毛、檳榔、網代等の品あり、馬には唐鞍、移鞍等の飾あり、舟亦竜頭、鷁首の名ありて、艨艟舶の如き類なり、各抄、桃花、蘂葉又和名抄、其名義お挙らる、而して輿と雲は、車の徹お放ちたる物にて、人手お用て是お舁く故に腰輿と称す、人腰の程に舁行故也、因て和訓も亦腰の義にて古之と雲へり、其輿に四方輿、塗輿、網代ごし等の次第ありて尊卑お分つ、則今雲轅輿也、其物は箱〈是間に雲ふ、くるまやなり、〉お轅に居へたる物也、今略称して轅と計も雲へり、東鑑に、鶴岡又二所 〈伊豆箱根お二所と雲なり〉御参詣の時、式には車にて、略式の度は輿お用らるヽと雲は、即轅輿の事也、又至極の内々には、女房の輿お用らるヽと雲事あり、