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今川大双紙

馬に付て式法之事
一御こしよする事、妻戸の左お賞玩するは常の儀也、さてよめどりの御こしは、のりたる人の右お賞玩するなり、右と雲は、乗手のためには左也、然るに大方輿およするには、役人とのばら両方にねり寄て、左右に膝まづきて、妻戸お押ひらきて、さて御輿の中へ目お見入ずして、長柄お執て、其時力者綱おはづしてまいる也、又長柄に執付とき、力者さしよる也、さて両方のとびらお押よせて、しさりてかしこまる也、のり給ひて後、うしろ妻戸おほと〳〵とたゝき給ふ時、則左右の役人、妻戸お開て長柄お取、然ばりき者心得て、御こしお引出す也、其後左右の長柄おか者に請取せて、手お付て片手にて妻戸お押とづる也、さて妻戸のちやう木のある方お上手と雲也、御こしおよするおば、いさするといふ也、
一御こしよするには、女には右のあがり、男には左の上りなり、輿およする時、殿原はつなの上へあがりて、つゝしんでかしこまる也、其後中間御こしおさしよする也、其時左の手おこしの長柄に打掛て、右の手にてこしの長柄おかゝへてよするなり、妻戸おたつる時は、下まへの方より押とづる也、さて又こしの縄も、右にとめて、又左にとむる也、是もとめやう、男女によると雲一儀有、〈○中略〉
一よめ入之時、迎の人に輿渡す事、輿お立て、さて互に一礼申て、先右の方の長柄お請取せて、軈て左おとらすべし、こしの後よりまわりて請取べき也、