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貞丈雑記
七/輿
一古は、今の乗物駕籠などに貴人乗る事なし古は大名其外、御免お受たる人は輿に乗る、こし御免なき人々は騎馬なり、出家なども輿にのられぬは馬に乗たる也、ある人の雲、今の駕籠などは、中古旅人などおのせ、又合戦の時、手負おのする為に作り出したる物也と、古老の物語也又雲、今の駕籠乗物などゝ雲物は、あんだと雲物お後に結構に作りなしたる也、異本曾我物語河津最後の条に、さて有べきにあらざれば、俄にあんだと雲物に、むなしき屍おかきのせて、宿所へこそは帰りけれ雲々、あんだと雲物は、旅人お乗する駕籠也、山駕籠といふ物也、あんぼつとも雲也、和名抄雲、箯輿〈和名あみいた〉とあり、是あんだの字なるべし、〈あみおあんといひ、いの字お略してあんだと雲なるべし、〉