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甲子夜話
十六
予〈○松浦清〉が乗輿には底に孔あり、何か祖先の武事に就ての所存ありしもの也、然ども布団お鋪てあれば、急用のことには及がたしと、或日集会のとき雲たれば、某者雲には、将軍家の御乗輿は、御徒士衆の預る所なるが、以前尹御布団はなきことの由雲伝ふと、将軍家さへさあらんには、予が祖先など布団無きは勿論なれば、当時の用法と始て知りぬ、何事も多聞は益あるものなり、