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守貞漫稿
後集三/駕車
貴人の女乗物は奥にて乗之、他家に著ても又奥に至は下る、奥と玄関の間は、女陸尺(○○○)とて、下婢の内より択て役之、路中も供して他の玄関よ夕亦これに舁す也、
此女陸尺にも看板と号けて、家々定りの摸様お染め与之、女陸尺前二人は背に向ひ、あとじさりにて玄関に出る也、又乗物の下左右各二鐶あり、婢是に手お懸けて助之、故に一駕は女にて玄関に至る、
女乗物も路次は男陸尺(○○○)也、前後四夫ともに前に向ふ、男陸尺看板は、男乗物の陸尺とは染方別〈つ〉也、幕府は唐草、其他は梅桜若松楓熨斗蛇等、種々家々定あり、下輩の駕にも著之、男乗物の陸尺にも、家により是に似たる染形あれども、自ら又異也、横筋或角つなぎ、或は輪ちがひ、又菱つなぎ等也、