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守貞漫稿
後集三/駕車
轎夫(○○) 縉紳家には駕輿丁(○○○)と雲、武家等は陸尺(○○)と雲、民間には駕籠舁(○○○)と雲也、駕輿丁頭お摎ふに、中形染木綿六尺許なるお、四つ折ばかりに帖てまとへり、其名追書すべし、武家に不用之、将軍家、御三家、御三卿、喜連川は、陸尺黒絹羽折お著し脇差お佩ぶ、乗物専ら四夫にて舁く、小身は三夫、或二夫にても舁之、高貴は十余人、或は七八五六人お供し、四夫輪替して舁く、余夫お手代りとす、権門駕籠四夫、留守居かご三四夫、献物かご二夫、はうせんじ以下並に二夫、蓋三四夫お供して、二夫宛輪替して舁も有之、市中往来留守居かご以上、大略息杖(○○)お用ひず、以下は用之、蓋旅行には高貴の乗物と雖ども息杖お用ふ、又はうせんじ以上は、息杖木、あんぽつ木或は竹、其以下は竹杖也、
江戸吉原及其他遊に通ふ徒、殊に急速お欲す者は、四つ手に四夫、或は三夫お供し、二夫づヽ輪替し舁く、二夫おさしと雲、三四夫お三枚四枚と雲、如此急速お欲する、地広く路遠き故也、此時ばかけごえして大股に走る、駕中動揺甚し、尾の名古やにも、熱田駅遊女に通ふ者お乗するかごあり、其疾こと江戸四つ手に下らずと雖ども、小股にて走る故に動揺せず、