[p.1041][p.1042]
嬉遊笑覧
九/娼妓
此〈○京都島原〉に通ふ遊客、むかしは駕籠なく、みな歩行にてありしとそ、古画お見てもしらる、後世人驕り駕籠にて通ふことゝなり、その家お中宿とし、音信の便理となる、一目千軒に雲、或者駕舁おかゝへ置かよひけるが、行けといはゞ、いづく迄もゆくべし、おろせといはゞ、おろせよといひしより、駕舁ものお卸(○)と異名するとなり、今おろせは駕はかゝず、かごお廻すものなり、かご舁は別にあり、此内にてかご自由おなす故、島原かごと人々呼なり、其外町にても駕人足お出す所、みなおろせなりといへり、おろせの名義、いとおかし、按るに、〈○喜多村信節〉卸は駕籠に乗は侈著の至りなれば、かご舁ととなふることおはゞかりて、異名お呼しものなり、字書に、舎車、解馬、脱衣、解甲、皆曰卸、今舟人出載亦曰卸など見えたり、すべてつみ載たる物お下す事なれば、唯荷物のやうにおぼめかしいへるにこそ、