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老人雑話

老人〈○江村裏斎〉幼なかりし時、延寿院玄朔は已に壮年にて、故道三〈○曲直瀬〉の世嗣とて、洛中医師の上首也、人々敬慕す、〈○中略〉玄朔盛んに療治はやりて方々招待す、その時は肩輿〈○一本作乗物〉と雲物なくて、大なる朱傘お指掛させ、高木履にて杖おつき、何方へも歩行す、人々羨ことにて有しとぞ、