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玄桐筆記
後篇
一御在江戸にては、〈○徳川光国〉御格式ある事なれば、御、出ごとに皆御輿に被召ぬ、御隠居被遊ても、御輿にて御出ありしに、いつの時分か、御家中若者ども、江戸上下駕籠(○○)にのり候由被聞召及、武士たる者は、馬によく乗らでかなはの事なれば、折節に付て心がけべき事なり、幸江戸上下、好き稽古なり、まして若く壮なる者の駕籠に乗る事、近頃似合はざる事なりとて、以の外御不興なりし、それより後は、御身お以て教示されんとや思召けん、御装束にて瑞竜へ御参詣の時ばかりは御輿に被召て、其外は遠近雨晴寒暑の差別なく、御出ごとに必ず御馬なり、