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新著聞集
一/忠孝
檳駕門外吉良上野介殿、〈○義央〉駕に乗ながら、上杉弾正殿屋敷の裏門よりかき入れられしお、坂田五左衛門といふ者、股だち高く取て走り出、駕おおさへ、これ上野殿、いかに弾正の実父にておはしませばとて、上杉の家は、異方とはかはれり、かゝる振舞は、此家の疵に成候まゝ、すみやかにかきもどし、歩にて入らせたまへと、眼おいらゝげていひしかば、げにも誤りたりとて、歩にて入りたまひしとなり、