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古事記伝
三十
凡て月々の名ども、昔より説どもあれど皆わろし、其中にたヾ三月(やよひ)お弥生(いやおひ)なりと雲るのみはよし、又師の考へに、七月(ふみづき)は穂含月(ほふヽみづき)、八月(はづき)は穂発月(ほはりづき)、九月(ながつき)は稲刈月(いなかりづき)なりと雲れたるなどは、さもあるべし、其余はいかヾあらむ、又九月は稲熟月(いなあかりづき)にてもあらむか、但賀(が)お濁るは、刈にても、熟(あかり)にても、いかヾなるは、音便にて濁るか、はた異意か決めがたし、此外にも己も考出て、さもあらむと思ふ彼此はあれど、十二月みながらは未考得ざれば、今雲ず、なほよく考へて雲べし、