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東雅
一天文
卯月といふ事は、詩の豳風に四之日といふ事お、周正の四月は卯月也と、見えしものともある也、周正のごときはさもこそあらめ、夏時お行はれんに至ては、四月お卯月といふべき事にあらず、などいふ事もあるべけれども、なお卯月といふ事は、たとへば上巳といふは、もとこれ三月上旬の巳の日おいふ事なれど、巍晋より後には、巳の日にはあらねど、三日おもて上巳といふ事のごとし、卯の花のさきぬる月なれば、卯月といふ也といふ説のごとき、しかるべしとも思はれず、うつぎといふ木は、其中のうつぼなれば、うつぎと名づけしに、其花のたま〳〵卯月にさきぬれば、卯花などとしるせし也、