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古今要覧稿
時令
うづき〈四月〉 うづきは四月の和名なり、ふるくより所見あり、時当四月之上旬(おりしもうづきのはじめつかた)と〈古事記訶志比宮記〉いひ、戊午年夏四月(うづき)と〈日本書紀神武紀〉いひ、八重畳(やへだヽみ)、平群乃山爾(へぐりのやまに)、四月与(うづきとや)と〈万葉集〉いひ、宇能花能佐久都奇多知奴(うのはなのさくつきたちぬ)とも〈同上〉みえたり、今少し世くだりては、うづきにさける桜おみてと〈古今和歌集詞書〉いひ、うつきとて、咲うの花にこつたひてと〈秘蔵抄〉いひ、うの花月おなにといはましと〈莫伝抄〉いひ侍るは、万葉集のうの花の咲月立ぬといふによりしなり、又卯の花月夜さかりすぎ行と〈蔵玉集〉いひ、四月うづきと〈八雲御抄〉みえたり、さて四月お卯月と名付たる義お解きしは、奥義抄に、うのはなさかりにひらくる故に、うの花月といふおあやまれりとみえたり、〈下学集、万葉考別記、類聚名物考、歳時語苑、日本歳時記、和訓栞等書、この説によれり、〉扠また四月の異名のごときにいたりては、秘蔵抄などに出たるお、はじめとやいはん、いはゆる此月おこのはとり月と〈秘蔵抄〉いひ、又夏初月(なつはつき)と〈莫伝抄〉いひ、えとりばの月と〈蔵玉集〉いひ、花残月と〈同上〉いひ、又首夏と〈和名類聚抄〉いひ、孟夏と〈年中行事秘抄〉いひつるも漢名なり、仲呂と〈拾芥抄〉いふは律名なり、是則礼記月令に、其音徴、律中中呂といふによりしなり、