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日本歳時記
二正月
世俗、正五九月とて、此三月お拘忌事はなはだし、中華にもかくのごとくなると見えたり、五雑俎に正五九不上官、唐より以来此忌あり、清波雑志にいはく、仏法以此三月為斎素月、不宜宰殺、足破俗見、今京師官命下、則任初不忌此三月、而差跌更少、外官無不避之者、而禍敗更多、何不思之甚也とあり、又琅琊代酔編にいはく、正五九月不上官、戴埴がいはく、釈氏の智論に、天帝釈宝鏡お以て四大神州おてらす、毎月一たび移して人の善悪お察す、此三月南澹部州おてらす、唐人これお以て死刑お行はず、曰三長月(○○○)節鎮因て屠宰おいましむ、不上官、後世因之となん、これお以てみれば、浮屠氏の説より出て、儒家の説にあらざれば、是非お論ずるに及ばず、世人かならず、此拘忌になづまずして可なり、