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長明無名抄
一五条三位入道〈◯藤原俊成〉談雲、そのかみとし廿五なりし時、基俊の弟子にならむとて、和泉前司道経おなかだちにて、かの車にあひのりて、基俊のいへに行むかひたる事ありき、かの人その時八十五なり、その夜八月十五夜にてさへありしかば、亭主もことにけうに入て、歌の上句おいふ、
なかの秋とおかいつか(○○○○○○)の月お見て、と様々しくながめいでられたりしかば、是おつぐ、きみがやどにて君とあかさむ、とつけたるお、なにの珍らしげもなきお、いみじう感ぜられき、