![](https://ys.nichibun.ac.jp/KojiruienSearch/img/icon_pdf.gif)
徒然草
下
夜に入て、物のはへなしといふ人、いと口おし、万の物のきらかざり、色ふしもよるのみこそめでたけれ、ひるはことそぎ、およすげたる姿にてもありなん、よるはきらヽかに、はなやかなるさうぞくいとよし、人のけしきも、よるのほかげぞよきはよく、物いひたるこえも、くらくて聞たる、用意ある心にくし、匂ひも物のねも、たヾよるぞひときはめでたき、さしてことなることなき夜うち更て、まいれる人の、きよげなるさましたるいとよし、わかきどち、心とヾめて見る人は、時おもわかぬ物なれば、ことにうちとけぬべきおりふしぞ、けはれなくひきつくろはまほしき、よき男の日くれてゆするし、女も夜更るほどにすべりつヽ、鏡とりてかほなどつくろひて出るこそおかしけれ、神仏にも、人のまうでぬ日、夜まいりたるがよし、