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古事記伝
十七
今夜(こよひ)は昨夜お雲るなり、此は次の父神の言に、今旦(けさ)雲々とあれば、御歎お聞賜ひし、明朝の詞なればなり、其夜明て後も、なほ今夜(こよひ)と雲こと、津国風土記、夢野鹿事お記せる処に、明旦牡鹿語其嫡雲、今夜夢、吾背爾雪零於祁利止見支、伊勢物語に、今夜夢になむ見え給ひつると雲りければ、源氏物語野分巻、野分せし明旦の詞に、今夜(こよひ)の風とあり、和泉式部物語に、いたく零明(ふりあか)して、明旦(つとめて)、今夜の雨の音は雲々、