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改正月令博物筌
五月
梅雨出入(つゆあきいり)の説〈(中略)按ずるに、五月梅まさに黄み落んとす、柘榴の花ひらき、栗の花おち、蟇の子ちまたに躍るの比長雨あり、是お梅雨といふ、雨甚だ多からずといへども、かならず石ずへしめり、物かびお生ず、雷鳴お以て出梅とす、京師烏丸中立売下る町のちまた、又大徳寺門前の人家のうしろ、并に梅雨の穴あり、其時に至れば水わきいづる、晴んとすれば水かはく、摂州丹生の山田栗花落(ついり)理左衛門宅に井あり、径三尺深さ一尺、梅雨に入て水必わく、出梅の比水かはく也、〉梅雨天気 〈梅雨は多く西風南風にて、山の端に雲なく、風つよき時はふらず、風なき空に雲多く、天気くらくなればふり出す、是おくろはへといふ、此雨の内朝東風二三日つヾけて吹ば、空も白くなる、是お舶趕風(しらはへ)といふ、雨はるヽ也、雨やまんとして、はげしく雷鳴、これお順とす、然といへども、梅雨の内に雷おほく鳴ば、洪水お主る、夜鳴り、或は沖へなり入ものは、すべて宜からず、〉