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世事百談

梅雨 梅雨の節に入るお入梅といひ、あくるお出梅といふ、芒種〈五月中〉の前の壬お入梅とし、小暑〈六月節〉の後の癸お出梅とするよし、本草綱目に見えたり、しかれども時として、陰晴定まらず、時節のわかちがたきことあり、其時には花葵の花咲きそむるお入梅とし、だん〳〵標のかたに花の咲き終るお梅雨のあくるとしるべし、暦は算法に拘泥することなきにあらねば、天時の花草にて、節気お知ること正しとかや、ためし試むるにたがふことなしとある人いへり、