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昔々物語
一むかしは五節句に、若き衆大身小身共朝早支度して番頭支配方へ礼に行、夫より親方の親類、又は老人の親類へ不残勤、浪人の若き衆も不残礼勤し故、往還も賑あひて節句めきたり、近年は若き衆も節句日御頭礼用捨あれば、幸にして親方へも礼不勤、まして小譜請其外御奉公不勤者は礼抔勤る事はなき事と思ひ、朝より大白衣にて寝たり起たり、三味線上るりにて、酒呑友達の方へ行とも、上下不著、或はどうらくにかけ廻る、