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古今著聞集
四文学
康治三年甲子にあたりけり、例にまかせて、革命〈◯命恐令〉の定め有べかりけるに、宇治左府、前内大臣にておはしけるが、周易お学ばずして、此定にまいらん事、あしかるべしと覚して、よませ給ふべきよし、覚しさだめてけり、しかあるお、此事お学ぶ事、師有よし言ひつたへたり、又五十以後、まなぶべしともいへり、おとヾおぼしけるは、此事更に所見なし、論語には、小年にて学ぶべしとこそ見えたれ、さりながらも、俗語はヾかりあれとて、二年十二月七日、安陪泰親おめして、河原にて泰山府君おまつらせて、みづから祭庭にむかはせたまひけり、都状にその心ざしおのべられけり、成佐ぞ草したりける、そのとしおとヾは廿四にぞならせ給ひける、文道おおもんじ、冥加お恐給て、かくせさせ給ひける、やさしき事也、