改元物語

其三年〈◯明暦〉正月、江戸大火あり、其時の巷説に、明暦の二字、日月また日おそへたり、光り過たるに由り大火事ありなどヽ雲ふ、翌年に改元あつて万治(○○)と号す、此改元の時は、先考〈◯林信勝〉の例の如く、予〈◯信勝子恕〉勘例お調え、公家の勘文お読て、井伊掃部頭直孝、酒井雅楽頭忠世、酒井讃岐守忠勝、松平伊豆守信綱、阿部豊後守忠秋、稲葉美濃守正則列座、あまたの年号の字お議して、其中に貞観政要(○○○○)の文お引て、本固万事治(○○○○○)と雲へるお予読ければ、掃部頭直孝曰、これほどの吉事ある可らずと申さる、美濃守正則まことに宜しかるべしと雲へり、讃岐守忠勝等も最と同じ、御前へ出て言上し定る、