[p.0328]
松屋筆記
百十二
改元年号の文字
戸田茂睡が職原口訣大事に、改元年号の事、年号の文字定りて六十余あり、然れば上お下に下お上におきかへ、一字に六十余の文字おかへ〳〵して、六六三万六千にても、又三十六万とも、三十六億万歳にても、数定ればつくる期あり、尽ると雲はよからぬ事也、それによりて改元の時、勘文おはじめて上る人、文字一字お定りたる年号の文字の中へ入る也、天和年号あらたまる時、唐橋殿慎の字お入られし也、唐橋殿又貞享の年号お勘らるとも、一人一字の作法なれば、はや文字おば入られざる也、貞享の年号余人勘らるれば、又文字入也、然れば一字の文字にても、上におき下におきすれば、定り六十字に合せても、百廿の年号あり、是にて浜の真砂はよみつくすとも、年号の文字の尽る事なき子細あり雲々、