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安斎随筆
後編十二
一本朝の年号、俗の唱る所は呉漢両音お交て、一定格無之、名目抄などにも見へず、年号のよみやう(○○○○○○○)、訓解お記したる書有之候哉、本朝年号の事、先年滋野井殿へ窺申処、凡て呉音に唱る事に候へ共、呉音にて連声のあしく、聞にうるさき唱は、漢音にも唱る也、文明慶(みやうけう)長と唱べきお、俗にはぶんめい、けい長と雲ふはあしヽ、作然難陳の度々音義の悪きは一難お得る事に候へども、先はじゆく、ひやう、なん等の音のあるは、勘例に省く事之由、又大化は大〓と濁音に可唱事に候へ共、往昔より大化とすみ来り候類も在之候由、此外いろ〳〵の口話御座候き、年号の儀は、別に考運会とか申書御座候由、〈文章家にて秘書の由、滋野井家にも御蔵本無之由承申候、〉