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類聚名物考
政事九
年号字訓お用ひし例 年号の字は、すべて漢の制に習ひて立られしものなれば、音読にして訓お用いず(○○○○○○○○○○)、しかるに天武天皇の御宇、日本紀に、朱鳥お此雲阿訶美苫利と有お始とせり、さて此後は又かヽる例なくして、又音読にせし事也、然るに中古の比より、仮名書歌の序などいふものに、又紀号お訓読にせし事あり、是は天下にわかつてかくとなへよとの仰方有にはあらず、唯その仮名書のさまによりて、やわらかに訓読にせしものなり、さればとて後世にみだりに訓読にはすまじきもの、されども仮名書には、又さ書たりとて僻事ともいふまじきなり、唯仮名書のうへにのみの事と思ふべきにや、廿一代和歌集の序にも、藤原俊成卿の書れし千載集の序に始めて出たり、その前には見えず、