茅窓漫録

下

革命紀元〈◯中略〉　文字お用ふるも、一字より四字まで、古例法則あり、方日升曰、案紀元雲、以一字紀元者、始於漢文帝後元年、景帝中元年、以二字紀元者、始漢武帝建元元年、以三字紀元者、始於梁武帝中大通元年、以四字紀元者、始於漢哀帝大初元将元年、今詳立号紀元、当始於文景、非武帝也、〈見韻会挙要小補〉此邦異年号に、兄弟和、倭黄縄、白鳳雉の三字あり、又天平感宝、天平宝字、天平神護、神護景雲の四字あり、いづれも漢土の例に効ひたるにや、文字の美悪義理などは、勿論吟味講究して、古人の論弁したるお考索し、紀元あるべき事と覚ゆ、漢土にて改元の誤お論じたるは、明の燧和仲が千百年眼〈巻十二〉に、国家以改元為重、然歴世無窮、美名有限、遂有前後相複之嫌、〈中略〉又当詳稽国運、如宋改治平、而説者謂火徳不宜用水、則我朝土徳不宜用水、犯之者有耗損元気之嫌、又当審国姓、如周高祖姓字文改元宣政、当時以為文亡日是也、又当避忌国号、如唐禧宗改元広明、而当時以為唐去其口、而著黄家日月、後果為黄巣所簒是也、大率離合之懺、深微難逃、最宜熟察、桓玄改元大亨、議者以為、一人二月了、果二月乗輿反正于江陵、梁予章王柬武陵王紀、皆改元天正、説者謂二年一年止といへり、其他斉後主緯は竜化と改元し、隋煬帝は大業と改元し、未斉顕祖は天保と改元し、宋徽宗は宣和と改元し、欽宗は靖康と改元し、各皆其徴お載せたり、又正の字はたヾしき字義なれど、一止お合せて正とすれば、正始、正隆、正平、正暦、正法の類、皆古徴にあらずといへり、正の字も用ひどころによるべし、此邦改元ある毎に難陳といふ事あるは、専らに此等の事お是非せむが為なるべし、