[p.0370]
偽年号考
蜷川氏所蔵年代記に、天文九庚子の頭書に、庚子命禄(○○)元年に成、又壬寅帰天文十一年とあり、これによれば天文九年始めて命禄の号ありて、十年お命禄二年として、十一年には其号お止めしと見へたり、本土寺過去帳に、妙了命禄二正月廿一日とあり、以上の三号皆関東偽間の用ひし所にて、もと仏家より出たり、故に其号多くは仏寺の記録器財に存せり、鹿島の神符に弥勒の号ありしと雲へるも、この神宮中古より両部となりて、神宮寺以下社僧多くあれば也、塔寺村八幡長帳も社僧の記せしものなれば、福徳の号お載たり、蜷川年代記も、もと前に引証するもの皆僧家のもの也、