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おもひのまヽの日記
やう〳〵夜あけ行ほどに、小朝拝御薬の奉行の人々まいり集りて、とくとくと催す、〈◯中略〉やがて上達部ひきつれて殿上にまいりぬれば、小朝拝催さる、前関白大殿にて、嘉保よりこのかた、かしこき代々のあとお尋ねて小朝拝にたつ、牛車にのりて随身十人いとめづらかなるさまなり、大殿殿上の奥の座につきぬれば、関白ははしにさぶらふ、太政大臣右大臣左右大将、数お尽して卅人ばかり、殿上所せきまでつきならびたり、無名門より入ほど、思ひ〳〵に追つれたる随身のさきの声々、いとおどろ〳〵しきほどなり、次第に座おたちて、ゆば殿につらなりたつ、事のよしお申、出御のしきなど皆例のことなり、前関白、関白両人ねる、これもめづらしき事なるべし、大殿笏おつきて、宿老の拝とかや用らるヽ、元弘にも故殿かやうに振舞れけるとかや、