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公事根源
正月
元日節会、〈◯中略〉一献には、国栖歌笛お奏す、是は吉野の国栖人の事なり、応神天皇十九年十月に、吉野の宮に行幸有し時、国栖人参て、一夜酒お奉りて、歌おうたひける、此くず人、山のこのみお取くらひ、又かへるお煮て名おば毛弥となづけて、美味有とて食けるとかや、吉野の川上にいて、嶺けはしく谷ふかヽりける所なれば、路さかしく侍故に、常に来朝する事不協となん申ける、其後は、常に参て年魚やうの物お献けるとかや、今の国栖の奏とて、歌お謡ひ、笛おふきならすは、吉野より年始に参たるといふ心なり、