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故実拾要

元日節会 凡節会の時は、太子御束帯にて紫宸殿へ出御ありて、御帳台に著せ玉ひて、節会の規式執行はるヽ事也、又御帳台とは、白絹お以如蚊帳仕立たる物也、其一幅毎に唐鳥唐花等の縫あり、紫宸殿の南の方へ向たる方お一方打合にして御帳お垂る也、自是天子御帳に入玉ふ也、又御帳台と雲は、出家などの用いる倚子の如くなる物なり、是お御帳の内に安置す、是に天子皇居し玉ふ也、又此御帳の前に駒犬二匹置之也、凡其厳儀如神前、又御帳の東北の方に円座お敷、小屏風お以構之、是関白伺候の座也、又紫宸殿の階の前の南庭、五六間四方の四隅に、竜頭の瓶子、鳥頭の瓶子お置、節会の規式、於此内執行はるヽ事也、此外地下の諸司等は、外の於御庭事お行ふ也、又同じ御庭の階の前に、中将少将御旗お持て、数輩二行に漿木に著て候ず、是天子お奉守護也、又竜頭の瓶子、鳥頭瓶子は、瓶子の口お竜頭鳥頭に拵たる物也、又節会の執行は、堂上家家の伝受ありて、凡俗の不知事也、凡は俗家に於ての節の饗応お設くる事に同うして、是に行ひある事也、故は節会の時、随役の大臣公卿の諸臣に饗膳お設くる也、所詮此式悉く難記事也、〈◯中略〉 同調進物方 晴御膳、〈内膳司〉腋御膳、〈御厨子所預〉饗膳、〈大膳職〉松明、〈主殿寮〉庭燎、〈主殿寮〉幔、〈同上〉火櫃生炭、〈同上〉南殿〈并〉陣座掌灯、〈同上〉軾〈并〉薦、〈掃部寮〉黄縁半帖、〈同上〉筵道〈同上〉御粧物所小筵、〈同上〉御殿、〈自御蔵沙汰之〉殿上掌灯脂燭、〈同上〉国栖座、〈南坐〉版、〈召使〉小板敷畳、〈出納〉陣畳、〈大蔵省〉禄物、〈大蔵省〉結灯台、〈木工寮〉宣命使、〈図書寮〉打板、〈修理職〉布毯、〈内蔵寮〉御草鞋、〈戸屋主〉 右節会調進物也