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摂関大臣正月の初に方り、盛に宴お私第に張り、請客使お発し、親王公卿お招く、之お大饗と雲ふ、常に母屋にて行ふお以て、一に之お母屋の大饗とも雲へり、此日朝廷より使お其第に遣して、牛酪と栗子とお賜ふ、是お蘇甘栗の使と称す、又其第にては、鷹飼、犬飼おして庭上に出でしむ、其故らに雉お捕へしめて、以て坐客お饗するの意お表するなり、而して大饗の具には、藤原氏の長者は、祖先冬嗣より伝ふる所の朱器台盤お用い、自余の大臣は、赤木黒柿机様器等お用いる、新任大饗お行はざる大臣の如きは、此饗に臨むことお得ざるお以て例とすと雲ふ、