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栄花物語
三様々の悦
今年おば正暦元年といふ、正月五日、内〈◯一条〉の御元服せさせ給、さし続き、世の中急ぎたちたるに、摂政殿〈◯藤原兼家〉二条院にて大饗せさせ給、作り立させ給へる有さま、えもいはずおもしろうめでたければ、はえ〈◯はえ、一本作ほい、〉あり、嬉しげに思し興ぜさせ給、一条の右のおとヾ〈◯藤原為光〉尊者には参り給へり、目もはるかにおもしろき院の有さまにぞ、えもいはぬ、ひんがしの対には、内のおほい殿〈◯藤原道隆〉すませ給へば、やがて姫君達など物御覧ずれば、こと殿原も御覧ずべう申させ給へど、聞し召いれず、宮々いとうつくしきこ男どもにておはします、