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岷江入楚
二十三初音
〈草〉河海説あやまれり、大饗は毎年正月に三公各これお給ふ、其時は請客の使などありて、客人お殊更招請して、藤氏の一大臣は氏長者たるによつて、朱器台盤お氏院よりわたして是お用いる也、自余大臣は赤木くろ木のつくえ様の器お用也、尊者あり、鷹飼などわたる儀あり、臨時客と雲は、正月二日三日の間、関白大臣の亭へ客人のふと来れるお雲、さて臨時客とはなづくる也、其時は台盤などは用ひず、おしき高つきおすゆるなり、催馬楽朗詠かたぬぎなどあり、楽器おめさず、笏拍子にてうたふ物也、源氏君太政大臣たるによて、臨時客の事、摂政の臣の如し、 〈私〉年中行事秘抄雲、正月二日関白家臨時客事雲々、 花鳥と、根元抄と相違、花鳥の時しるし改らるヽ歟、〈◯中略〉 〈玉雲、〉客、きやくとよむべし、一勘、臨時客は摂関家にての名目也、但六条院は大臣ながら執政の職おも兼たる程なれば、なずらへていへる也、一勘、〈◯中略〉 〈草〉臨時客には楽器お用ず、郢曲の人笏拍子にてうたふ也、然共此臨時客には大饗の例になずらへて、笛の筥などおめし出したるにや、物のしらべといへるおぼつかなし、但物のしらべとは、音曲につきて時の調子おも雲べし、楽器の有無にはかヽはるべからず、