[p.0660][p.0661]
幕朝年中行事歌合

二番 左 元日参賀
よろこびの声もひとしく春にあふ君がみとのヽ内つ諸人
  右 二日参賀
へだてなき春の光に玉だれのおすのと山も千代呼ふ声〈◯中略〉元日参賀は、三家三卿の方々よりはじめ、譜代の大名小名、百の司々、皆城にのぼりて拝賀す、〈◯中略〉三家のかた〴〵、溜の間詰、宿老の人々、侍従四位の輩は、白木書院にてかはらけ給ひ、おのおの呉服一重ねおたまふ、それより大広間に渡御有りて、諸の大名、五位以上の輩、百の司々、法印法眼のたぐひまで、御まへにして大みきの流お給ふ、是お大流と雲、皆呉服一かさねづヽおたまひ、かづきつれてまかづ、入御ありて後、布衣の輩に流れお給ひ、諸さぶらひ番士のたぐひ同朋にいたる、これお小流と雲、此日四品より上つかたの輩は、太刀折紙みづからもて出てことほぎおのぶ、それより下つかたは、太刀折紙前に置て拝謁す、二日は、大広間にて国主の面々ひとしく出て拝賀し、相伴の座につらなれば、番頭の輩ひきわたしもて出づ、やがてかはらけ賜り、各呉服一かさねお給ひてまかづ、のち外様の大小名及び昨日残りし有司の輩、小流れお下され禄給ふ事、すべて元日にかはる事なし、両御所の奉りものも又おなじ、
三番 右 三日参賀
春立ていく日もあらぬに玉くしげ三たびとなふる松の万代〈◯中略〉
三日の参賀は、無官の面々松の廊下に列り、井伊、榊原、奥平の家の老ども、その末に有て拝賀す、入御の折とのヽ中ゆるされたる市の長どもお始め、京、大坂、堺、奈良、伏見過書、銀座等のものども皆なみいて、遥におがみ奉る也、