[p.0745]
塩尻

諸州節序佳例 諸州年始節序の祝各不同、古よりの風俗ありていと異也、南都は富家貧戸とも、元三家の入口の庭に囲炉裏お構へ、福わらあつく其上に畳しき、家の主夫婦そこに出て拝す、年礼の客お接す、門には必むしろお垂れて賀客案内すれば請じ入、家の妻自ら餅やくまねして雑煮に入て饗す、客庭竈の祝にあひたるとて謝す、伊勢宇治辺は年礼の客来れば、先おしきにさんきちやるとて、二寸計りのわりたる木二三枚、わらにて結びたるお置、田作かうじなどおき交へて、これお年始の饗とし、つぎにいもがしら三つ椀に入れて〈宝珠と雲〉すえわたし、小紙壱帖お以て引出物とす、家の貧富により紙の大小多少あり、