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伏見宮所蔵宸翰類

称光院宸翰
まことに年立かへり候春のしるしも、けふのかひあるめでたさ、いよ〳〵天下おだやかに朝家再興の時いたり候へば、宮中も毎事御満ぞくの春にて候はんといはひ入参らせ候、なほとくげざんの時、尽期候はぬ祝詞申うけ給ふべく候、このよし御参らせ候、かしこ、
  後柏原帝宸翰写
まことに改正の慶事、日新又日新、朝廷のまつりごと聖代にこえ、宮中旧貫に復し、才名美誉世にほどこされ候へば、祝詞のかぎりにあらず候、かならず参会候て、永々申承り申候、ことに芳樽済々送賜候、千秋万歳いはひ入まいらせ候、軽微に候へどもおなじく春祝言候、日々御慶申うけ給へかし、かしこ、
    ふし見殿へ〈参る〉     勝仁
  正親町天王宸翰
まことにあらたまり候年の光もかひあるめでたさ、天下いよ〳〵おさまり候て、まつり事、むかしのごとく再興の時おえ候へば、宮中も御はむじやう候て、よろづ御心に残る事なき御満ぞく、ことぶきのかぎりもあらずおしはかりまいらせ候て、日おかさねてのめでたさは、とく御参賀候て申され候べし、あなかしこ、
  伏見殿へ〈御返事〉
  後陽成天皇御真翰
誠鳳暦端おあらため、夏正三陽の運会に対し、竜躔次お易て、尭天両儀の交泰にあたる、百鳥声和して、おのづから善政無極の祥おとなへ、千山霜むらがりて、転温厚宣化の徳おあらはす、仁恵に懐ひて四夷八蛮辮お解て来貢爾此春に候歟、猶々千喜万悦、御参賀の時お期し入候、あなかしこ、
   伏見どのへ〈御返事〉