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遊芸園随筆抄
水野日向守は、明和の頃御勘定奉行たりしが、元下賤より御取立お蒙りたる人なりし、此人毎年正月の始に、立涌の摸様ある烟草入お、知る人には贈ることお家例とせりと雲、其意は、立涌と申もの、曲りたるが如くにして全く曲らず、終におのがこヽろざす所に至る、おもしろき形にして、いと味あるものゆえ、此摸様お附るなりと、日州嘗て或る人に語りたる由、