[p.0837]
翁草
百二十
正月の饌具は、山家質素の俗より始りけるにや、栗、榧、ところ、又歯朶、ゆづり葉など、雪中に枯ぬもの故、祝して用ひ来れるなるべし、其象お表し其儀おとるにはあらじ、田作り、海老等も、干堅めたる物なれば、名にめでヽ之お用ひ、元日にいもじ、あらめ用ふる事は、延喜式にも見え、土佐日記にもあれば、久しき風俗と覚え侍る、唐の元餅お、我国の歯固めに附会し、五辛盤お倭の蓬萊の事のやうに語り侍るは、似て是ならず、又元日に鯡肴お用ふる事、春陽は東より来ると雲ふおもて、西の縁おかりて祝するなりと雲り、