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世諺問答
正月 問て雲、同日〈◯元日〉歯固といひて、餅いかヾみにむかふ事は、いかなることぞや、答、〈◯中略〉もちいは近江国の火切のもちお用ひ侍るべき事なり、さて正月のかヾみにしてもちひむかふ時は、古今集に入たる、 あふみのやかヾみの山おたてたればかねてぞみゆる君が千年は、といふ歌お誦するなり、このうたは、延喜の御門の御時、近江の国より大嘗会の御べたてまつりし時、大伴の黒主がよめる歌なり、源氏初音の巻にも、此歌の詞おひきてかける也、