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華実年浪草
一上正月
大服〈大服は点茶之名也、(中略)淡海志に雲、正月詞に祝て、勢田には大服茶お点て、吹たり廻たりと雲て呑、矢橋にては是に異なり、旱に粥お食て、今日は能き〉〈かい日和なりと雲と雲々、是互に旅人の多お悦ぶ也、今式に雲、大ぶくといふ事、古格ありといへどもいむべし、服といふ文字なれば、作になりてよろしからず、近く松崎蘭如といふ俳人有、大ぶくと作るとも、何ぞ禍福其詞によらんやとて、大服や三口にちやうど寿福禄、とせしに、その年類孫の愁ありて、服お受る事三度と雲々、雑談抄に雲、六十二代村上帝、六波羅密寺の観音お信敬し玉ふ、或時御悩の事あり、医薬験お失ふ、当寺の本尊霊夢の告ありて、供ずる所の奠茶お服し玉ひて御悩平愈し玉へり、然れば主上の服御するお以て王服と称し、毎歳元旦に当寺の供茶お召て服し玉ふ由、縁起に出雲々、又足利家の時、茶道盛んの故に始と雲々、〉