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倭訓栞
前編六加
かどまつ 正月門ごとに松竹など立て祝ふお、門松と称せり、門神の祀なるべし、徒然草に、大路に松立わたしと見えたり、全浙兵制、我邦正月の事に、以松柏挿門、乃取長春之好といへり、為尹歌に、
今朝はまた都の手ぶり引かへて千色の始め〈◯千色の始め、為尹卿千首和歌作ちひろのみしめ、〉しづが門松、歳華紀麗に、元日松標高戸とも、董勲問礼に、繫松枝于戸とも、風俗記に、正旦楚人上松柏類ともいへり、其意近し、今福閩の間、正月門戸に松竹お飾り立るは、国姓邪より始るよし、西川氏の書に見えたり、禁中并に堂上には、門松おかざる事なし、諸家中に注連おひく事あり、