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諸国図会年中行事大成
一正月
元日門松飾藁 今日より十五日まで、門前左右に各松一株竹一本お立、上に竹二本お横たへ、飾藁お付、是に昆布、炭、橙、蜜柑、柑子、柚、橘、穂俵、海老、串柿、楪、穂長お付る、〈穂長一名歯朶、又裏白、或はもろむきと雲、夫婦相生の義にとる、譲葉和名親子草と雲、子孫相譲て長久お祝す、又根引松お門に立、間口に応じ注連飾お張り、其余裏口、井戸、竃、神棚、湯殿、厠に至迄、松お立、輪飾とて注連お輪にして掛る也、門松は孟春戸お祭るの義乎、或雲、神代穴居のとき、各其食するものお木に竹お架し、かけ置たる微意といへり、世諺問答雲、此事いつの頃よりとはたしかに申がたし(中略)或説雲、一条院御宇、寛弘の頃より、民間専ら門松おいとなみけるといへり、むかしは禁裏院中并に摂関などの貴家、門松或は注連飾は営む事なし、是は平生に不浄お入るヽ事なし、民家は常に不浄お触るヽ事多かめれば、年の始に神お祭るため、あらたに門戸おまうくる義ならんと雲雲、一説に、素戔嗚尊南海に赴給ふとき、蘇民が子孫は、門に印の松お立べし、其家には疫神お入れじと誓ひ給ふと、又門松は巨旦鬼王の塚お表せりと雲、何れも信がたし、〉