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守貞漫稿
二十六
正月十五日、十六日、俗に小正月と雲、〈◯中略〉 京坂ともに、十五日に門松注連縄お取除く也、江戸も昔は今日なり、大坂は門松注連縄の類お、諸所川岸等に集め積て、十六日の暁前に焚之て、左義長の義お表す、焚之お坂俗はとんどと雲也、 十四五日頃には、小戸貧民の男童等、藁筵の両辺に竹おつけ、四人にて担之、坊間諸戸お廻て、門松縄等お乞ふ也、多く集むお功とし、少きお恥とす、年来の習風にて、何れの時より如此歟、彼童等乞之詞、おえさん、だなさん、しめなわくだんせ、とんどへあげる、と同音に呼び巡る、御家は人の妻、御家様、旦那様、しめなわ被下、頓度に上ると雲也、とんど字失念す、又彼童等、十五日に至れば、得之こと鮮きお愁とし、九、十日頃より、或は強て乞之、或は夜中に忍て取之、故に官よりも禁之、又坊長よりも下の如く、木戸其他にも張紙せり、 御法度門松注連縄猥に
取はづすべからず貧之と雖ども、唯多きお功とし興ずるのみ、銭等お添加に非ず、