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貞丈雑記
二人品
一万歳とて、えぼし素襖著て、年の始に人の家に来りて、祝事おうたふ者、古よりあり、足利殿の営中には、正月七日参りし也、年中恒例記に、正月七日の部に雲、千秋万歳参る、〈◯中略〉いにしへは千秋万歳といひけるお、後世は略して万歳とばかり雲也、万歳のうたひ物の詞に、千秋万歳といふ事ありし故、如此名付たりとぞ、昔は三河国より出たると也、今は三河、尾張、遠江の三け国より出る也、土御門殿〈公家也、陰陽師の頭也、〉より官位お申受る由也、